贖罪
緊急事態宣言が解除され、人々が冬眠から覚めた月曜日。
俺が足早に向かう先は、セブンイレブン。
整骨院から出てきたかめはめ波が打てそうなおじいちゃんには目もくれず、
ただ右足と左足を交互に動かすだけの俺。
丁寧に陳列されたペヤングそっちのけでレジに直行。
ポツリともらす、「199番。」
年齢確認のボタンを1秒もかからず押す。
かつて禁煙を誓った男はもうそこにはいない。
かっこつけて書いたけど、
禁煙失敗しました。
金マルを買った。
520円で、煙を買った。
自分の弱さを買った。
買った後に来る、吐き気と後悔。
でも買ったもんはしょうがない。
あとは、吸うだけ。
家には使われなくなった6つのライター。
この文明の利器を発明した昔の人は、
きっと使われることを望んで作ったはずだ。
大丈夫、火のつけ方は、この手が覚えてる。
ゆらゆらと燃える炎が、支柱を失った俺の心と重なる。
俺は追い込まれれば追い込まれた分、頑張れる人間だと思ってた。
だけど実際追い込まれたら、やる気がどっかに飛んでった。
禁煙失敗しました。
そもそもなぜ禁煙しようと思った。
誰かのため?違う、俺のため。
喫煙は、肺がんをはじめ、
あなたが様々ながんに
なる危険性を高めます。
老眼にも読めるようにでかでかと書かれてるわ。
だけどなJT、
こんな言葉、いまの俺には響かねえんだよ。
もういっそのことこう書いてほしい。
喫煙は、した瞬間、死にます。
もう吸いません。
次に吸うのは、天国です。